【接客業から始まった人生:第4話】いつも褒めてくれるマネージャー

高校生だった私にとって、大人は子どもを叱るのが普通だと思っていた。

出来の悪い私が、あまり大人から褒められる機会がなかっただけかもしれない。

まぁ、どちらにせよ、そんな大人という存在に良い印象は持っていなかった私。

だけどバイト先のマネージャーは知っている大人とは違う眼差しだった。

何をしたわけでもない。

ただ出勤時に目を見て挨拶をしただけだった。

たったそれだけのことで、満面の笑顔で

「おはよう!気持ち良い挨拶ができていいねぇ!ありがとう!」

と、私を褒めてくれたマネージャー。

心がふわっとしたのを今でも鮮明に思い出せる。

それからだ。

会うたびにマネージャーは、ただのバイトの私に、会うごとに笑顔で挨拶をしてくれるようになった。

それが嬉しくてマネージャーを見ると自然に笑顔になる。挨拶がしたくなる。

そうすると、マネージャーは笑顔がいい、声がいい、元気が貰えると、色々な言葉で褒めてくれた。

その毎日の繰り返しが、少しずつ私に自信を与えてくれた。

人見知りな私が、初めての人に対しても、少しずつ笑顔で接することができるようになったのも、マネージャーのおかげだと思う。

今思うと、倫理観を焼却炉に捨てた適当な先輩(前話登場)も、このマネージャーにはペコペコしていた。

自分も責任者を経験して分かったが、責任のある立場で、いつも笑顔を絶やさないというのは簡単じゃない。

時には厳しいことも言わなきゃいけない。

感情に流されそうになった時は、マネージャーの顔を思い出してグッと踏みとどまる……ことが、できたらよかったけど簡単じゃなかった。

歳を重ねた分だけマネージャーの凄さが身に沁みて分かる。

良い上司に巡り会えたのは、本当に運がよかったんだろうなぁ……

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