初めて接客業で働いたのは高校2年生の時だった。
子どもがメインターゲットのお店で、子どもに笑顔を振りまくのがお仕事の一つ。
当時笑顔が絶望的に出来なかったうえに、人見知りでコミュ障男な私は子どもに喜ばれるどころか嫌われまくっていた。
はじめて応対した子どもにギャン泣きされたのを今でもよく覚えている。
パートのおばさまが口にした「子どもはよく見てるからねぇ」という一言が突き刺さった。
「子ども、苦手なんですよね」と、精一杯の強がりを口にした。
『接客業は自分に向いてないんだろうな』
これが初めて接客業で働いた時の感想だった。
自信をくれたのはマネージャー
暗い気持ちを抱えたまま休憩へ。
事務所には面接を担当してくれた男性マネージャーがいた。
「どう?やっていけれそう?」
眩しすぎる笑顔。
「あ、いえ、その、子どもを泣かせちゃって……すみません」
「分かる!俺もはじめの時そうだった!可愛いなーって、顔がニヤケそうになるのを我慢してたら怯えられた!あれへこむよなぁー!」
裏のない笑顔と、自分が否定されなかったことで心がフッと軽くなった。
「大丈夫大丈夫!気楽にいこう!」
あぁ、そんなに身構えなくていいんだ。
『仕事なんだからキッチリしないといけない』という緊張がダメだったのかもしれない。
今思えばこの体験が人生の分岐点だった
そこから気持ちを切り替えて、午後の勤務へ。
『とりあえず笑ってみよう』
上手ではないけど笑ってみた。
大人相手は難しいけど、子どもなら目も合わせられる。
子どもは可愛い。子どもは可愛い。自分に言い聞かせる。
幼稚園くらいの男の子。
ガリガリ男に引きつり気味の笑顔を向けられた男の子。
笑ってはくれなかった。
でも手を振ってくれた。
私は無理にではなく、自然と笑顔になった。
きっとこの瞬間、私が長く接客業に身を置くことが決まったんだと思う。
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