
「あの人……なんだかいつもと様子が違うけど大丈夫かな」
こういうスタッフさんの微妙な変化に気づく能力が、現代では求められていると思います。
ただ、問題なのは「変化には気づくけど、どう行動に移せばいいか分からない」ということ。
難しいですよねぇ。実際。
ストレスチェックの義務化など、行政からの指導もあり、必要性も理解している……けど、具体的になにをすればいいか。
マニュアル的なことを言えば「しっかり話を聞いて、悩みを共有しましょう」といったところですが、あまりにも雑なアドバイスですよね。
では、なぜ世間に出回るメンタルケア方法が、そんなレベルのものばかりなのか。
答えは【マニュアル化できない】からです。
こればかりは、正直言って感性によるところが大きいです。
人というのは、言うまでもなく十人十色。相手の感情に寄り添い、相手にとって希望の一筋になるような言葉の置き方……など、その人それぞれにあった方法があって、それを間違えると逆効果になってしまうこともしばしば……
メンタルケアにおいては「有資格者でないとするべきではない」という意見も正直あります。
とはいえ、大企業ならともかく、中小企業などの場合は、そのような専門職を雇うというのは正直ハードルが高い。
それにできることなら、自分で仲間のサポートができるようになりたいという責任者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。僕自身もその一人ですが。
今回はそんな人に向けて、マニュアルではなく【コツ(あくまでも独学と15年の現場経験に基づいたものです)】としてポイントを紹介いたします。
*注意* 実際の医療行為にあたるような内容ではありません。素人に毛が生えた程度で、カウンセリングと呼ばれるような専門的なものではなく、「話しやすい相談相手」になるコツ程度に思って読みすすめていただけるとありがたいです。
- 【共感力】は諸刃の剣です。感情ではなく考えを聞き出しましょう
- 【沈黙】という間の使い方。あいづちがキーポイントです
- 壁の撤去。腕組みは【本音】を遠ざけます
【共感力】は諸刃の剣。感情ではなく考えを聞き出す

よく「わかるよ、辛かったね」という声かけを耳にします。
いわゆる【共感力】が高く、心の温かい人が、誰かのためを想って口にする言葉ですね。
こうゆう声掛けが心から出来る人は本当に素晴らしいと思います。
ただ、その温かい言葉を受け止める余裕がない状態を、人は「心が病んで(疲れて)いる」と言います。
相手のことを想って発している言葉なのですが、心が疲れている人は「あなたに何がわかるの?」「気にかけてくれているのに、ちゃんと答えらない自分はダメな人間だ」という風に、受け止めてしまうことも多いんです。
【共感力】は他人を思いやるうえで、非常に重要な感性で、こうゆう人たちの言葉に救われるひとは多く存在します。
ですが【共感力】が高く、人として優しいがゆえに、【相手の感情に寄り添おう】とする気持ちが強くなった結果、自分の感情と相手の感情が、わずかに違うことに気づけず「あなたの感情はこうだよね、わかるよ」という言葉にいたり、先に記述した 「あなたに何がわかるの?」 という状態になるという流れになることが希にあります。
たまにこうゆうときに「相手のことを本当に考えていない」なんて批判する人がいますが、本当に残念です。
言葉なんていくら取り繕っても、想いを伝える手段のひとつに過ぎないので、限界があって当たり前。
そのなかで相手に寄り添ってあげたいと想える、人として素晴らしいひと達を、たった一面みただけでわかったかのように言うのは……いかがなものかと(そういう意味では上記のような批判をするひとも、心が疲れているのかもしれませんね。すみません)
ということで、このような状態をなるべく避けるためにはどうすればいいか。
ヒントは「感情ではなく、思いに着目する」です。
例えば「あの人は何も私のこと分かってくれない!」と泣いている人の場合、感情が【悲しい】【悔しい】などなどで、思いは【私のことを分かって欲しい】といったところでしょう。
この場合に感情に着目すると「悲しいよね、わかるよ」という言葉になり、思いに着目すると「もっとあなたのこと分かってほしいよね」という言葉になります。
一見違いはわかりにくいのですが、後者の方は、単純に相手が自分で口にした欲求を言い返しているだけなので、「いいたいことと違う」となる可能性は低いと思います(相手の心理状況がひどい場合はあいづちするだけの方が無難ですが)。
このとき相手はどう感じるかというと「この人は私の話を聞いてくれている」といった感じですね。
これにより受け入れてくれているという一種の【承認欲求】が満たされ、心が落ち着き、冷静に本人が問題解決に向けて考えやすい状態へサポートできる結果につながります。
ちなみにこの原理は、職場において逆の方法で役に立つこともあります。
というのは、申し訳ないことにスタッフさんからの不満って、正直すべてを聞き入れてあげられるものではないことが非常に多いんです(おっしゃることはごもっとなんですが、それすると利益残らないよー!とか)
その時に「聞いても改善してあげられないから、不満を言われるまえに、話し合いの場をもたないようにしよう」という考えの方が希にいらっしゃいます。
触らぬ神に祟りなし的で、ある意味無難かもしれませんが、このケースの行く末は、ある日突然「もう我慢できません。やめます」ということも多いでしょう。
なのでこの場合は、先の方法とは逆に、相手の【不満という感情】に着目して「あなたは不満をかんじているんだね。わかったよ」と、相手の気持ちだけを受け止める話の流れにすると、改善できなくても(できるならしてください(笑))、感情のガス抜き(あまりこの言い方好きじゃないんですけど……わかりやすいので使います)をすることで、状況が改善されることもあります。
まぁ、ちょっとした裏ワザですね。
【沈黙】という間の使い方。キーポイントは「あいづち」

【あいづち】は言葉の壁を超えたコミュニケーション術の代表格です。
難しい単語は必要なく、ただうなずくだけだったり、「うんうん」というだけでも会話をスムーズにしてくれます。
ただ単純にそこを気をつけるだけでも、十分に効果はあるのですが、ポイントということなので、もう少し深堀して、【沈黙という間】を有効活用して【相手の本音】を引き出してみましょう。
やり方は簡単なのですが、タイミングは経験を積まないと掴めませんので、頑張って実践してみてください。
ということで本題に入ると、そもそも人間だれしも、他人といるときの【沈黙】って気まずいですよね。それをうまくコントロールしたものが下記の例です。
部下「○○は○○なので……と自分は思うんです」
上司「なるほど」
部下「はい」
上司「……」
部下「……」
上司「……」
部下「……(え、何?なんで何も言ってくれないんだろう。話はちゃんと聞いてくれてるみたいだし、ずっとこっち見てるし……もっと詳しく何か話したほうがいいのかな?)……えと、自分がそう思ったのに、実は別の事情もあって……」
といった感じで、予想外の【沈黙】に対して想像がふくらみ、思考がかけめぐった結果、先の言葉よりも本音に近い言葉を聞き出せるという手法です。
ちょっとここだけ見ると意地悪のようにも見えますが、一つの手法だと思っていただけたらと思います。
ちなみにこれは悪用厳禁です。
自分の立場を利用して乱用すると、一種のパワハラになり、相手を傷つけかねません。
相手を本当の意味でサポートしたいと思ったときに、相手の求める答えのヒントをつかむためのものくらいに思っておいてください。
壁の撤去。腕組みは【本音】を遠ざけます

最後に単純なことではあるのですが、誰かと話をするときに腕を組んじゃったりしていませんか?
誰かと話をしているときに腕を組む人の心理は「相手に心を悟られたくない」という場合が多く、それを本能が読み取るのか、話し相手に腕組をされるていると「なんだか話しにくいな」という印象を与えます。
これは腕組だけではなく、体が別の方向にむいている・足のつま先が出口に常に向いているというのも似たような状態ですね。
基本的に人間は会話の際、言葉だけでなく【表情】や【声のトーン】、そして【体勢】から情報をえています。
特に女性は本能的にこうゆう部分を感じ取る能力に長けているかたが多く「なんとなくあの人は信用できない」という言葉を口にする場面を目にしまね。
こうゆう本能で感じ取られる部分に注意し、不必要な【心の壁】を取り払っておくと、相手の本音がより聞き出しやすくなりますので、日頃から気をつける癖をつけてみてください。
さてさて、長くなりましたが、結論なにが大切かといいますと、上から目線で失礼ですが「相手の気持ちをできるかぎり聞きだして(吐き出させて)あげる」ことです。
誰かに思いを受け取ってもらえたというだけで、心の負担は軽くなります。
常日頃から、気持ちを吐き出しやすい相手になれるよう、責任者の方は意識してみてくださいね。
今回偉げに何回か【心理】という言葉を何度か使わせていただきましたが、心理術にはコミュニケーションを深めるには有効的なヒントが数多くあります。
先にも申し上げた通り、悪用は厳禁ですが、一歩深くまで人材育成に踏み込みたい方は、勉強してみるのもおすすめですよ。